他人に”尽くす”人たちは成功できない!

はじめに
私たちの中には、自分の利益のことばかり考え、周りになにも与えようとしない利己的な行動をとる人がいる。
また、他人に恵みを与え、協調性をもって行動する人もいる。
自分のことしか頭にない人と、相手のことを気遣える人。
どちらにメリットがあるのか。どちらが社会で成功できるのだろうか?
この記事では、両方のメリット、デメリットをとりあげ、総合的にどちらが成功できる人格なのかを考えていく。
【この記事の文字数】2912字
参考文献:エリック・バーガー「残酷な成功法則」飛鳥新社
ポイントまとめ
☆同調性の低い人のほうが高い人より年収が多い。
☆利己主義は相手の信頼を失わせ、社会を不幸にする。
☆善人は成功しない。
☆他人と自分への気遣いを忘れない善人がトップに立つ。
利己主義は高収入
利己的な人のメリットには次のようなものがある。
「ハーバード・ビジネス・レビュー」誌によると、同調性の低い人間のほうが、同調性が高い人間より年収が約1万ドル多いことが明らかになった。
ちなみに、財政面での信用度も同調性が低い人間のほうが高い。
悲しいことに、人間には、親切は弱さの表れだと勘違いする傾向があるようだ。
残酷な成功法則 第2章より
同調性の低い人間は、自分の望みを叶えることに対して素直だ。
周りを気にせず、はっきりと意見を述べることができるので、有能に見える。
また、サイコパス(冷酷、無慈悲などの特徴を持つ、反社会的人格者のこと)の要素を持った人間は企業のCEO(最高経営責任者)に多い。
彼らは、みんなと同じステージに立つより、権力を握り、頂点に立つことを好む。
周りを気にせず、自分の道をどんどん進んでいくので、仕事ができ、出世も早い。
【ポイント】
☆同調性の低い人のほうが高い人より年収が多い。
利己主義は信頼を失う
他人に奉仕せず、自分の利益を高めることだけに集中すれば、年収が上がるというのも納得できる。
しかし、世の中ぜんたい、長期的に見れば、そうした利己的な行動はデメリットになるのだ。
世の中は、あらゆる人々の仕事によって成り立ち、その仕事には、信頼関係が必要だ。
もし、自分のことばかり考え、相手を信頼しない人間が増えてしまうと、社会が成り立たなくなる。
社会学者のルート・フェーンホーヴェンが世界中の国の幸福度を調べたところ、幸せから最も遠かった国は、モルドバ共和国だった。
モルドバ人の生活のほぼすべての面で信頼が欠如している。
作家のエリック・ワイナーによると、あまりに多くの学生が教師に賄賂を渡して試験に合格するので、国民は、35歳以下の医者にはかかろうとしない。
医師免許も金で買っていると考えられるからだ。
(中略)
信頼感、協調心の欠如は、この国を利己主義のブラックホールに変えてしまったのだ。
同
自分のための行動は相手の信頼を失わせ、やがてだれも信じられなくなる社会が生まれる。
そうした社会の幸福度の低さは、調査しなくても明らかなことだ。
また、ずるをして自分の成績を上げようとする者がいれば、周りの人間にも悪影響を与えるというデータがある。
いんちきをすると仮定し、人を信じるのをやめる。
そのあとは努力をしなくなり、ひたすら下方スパイラルに入る。
仕事のチームに悪い従業員がたった1人いるだけで、チーム全体の業績が30~40%低下するという。
同
1人でも手を抜いている者がいれば、真面目にやるのがバカバカしくなる。
みんながずるをしていれば、ずるをしないほうが損をすると考えてしまう。
そうした雰囲気の職場で働きたいとは思わないだろう。
【ポイント】
☆利己主義は相手の信頼を失わせ、社会を不幸にする。
善人は搾取される
自分よりも他人に奉仕することはいい行いであるかもしれない。
だが、善人の行いが正しく評価されて、成功へ結びつくかどうかはわからない。
ペンシルバニア大学ウォートン・スクール教授のアダム・グラントは、「成功」という尺度で見たとき、最下位のほうにいるのはどんなタイプの人なのかを解析した。
するとじつに多くの「ギバー(受けとる以上に、人に与えようとするタイプ)」がいることがわかった。
同
この調査では、利他的な行動をとる人、自分より他人のことを考える優しい人格を持った人は、成功から1番遠い、ということが明らかになった。
善人の行為は報われないことが多いようだ。
他人に奉仕するあまり、自分の成功をつかめず、その優しさにつけこむ人々から搾取され続ける。
道徳で教えられた相手への気遣いが、自らを滅ぼすことにもなるのだ。
【ポイント】
☆善人は成功しない。
善人はやっぱり成功する!
善人は成功から遠いことがわかった。
しかし、それにはとても興味深い続きがあった。
「ギバー」が敗者のほうにいるなら、最も成功している勝者には誰がいるのだろうと、スペクトラムの反対の端を見てみました。
すると心底驚いたことに、トップのほうにいるのもまた「ギバー」たちだったのです。
いつも他者を助けることを優先している人びとは、敗者ばかりでなく、勝者のほうにも多く登場していました。
同
他人を気遣う善人は1番成功から遠く、また同時に、1番成功している人たちだったのです。
同じ善人でも、どうして成功に最も近いタイプと、最も遠いタイプにわかれるのか。
ポイントは、他人への優しさの程度だった。
成功から遠い善人は、あまりに自分を捨てて、相手に奉仕してしまう。これが、成功から離れてしまう大きな原因だ。
成功に近い善人は、他人を気遣うが、自分の成功も大事にしている。
だからチャンスを逃さず、頂点に上ることができるのだ。
優しさは大切だが、それが過ぎると自分の将来を台無しにしてしまう。
だからといって、優しさを捨てず、相手への気遣いと自分の成功を忘れなければ、光輝く未来が待っている。
【ポイント】
☆他人と自分への気遣いを忘れない善人がトップに立つ。
ポイントまとめ
☆同調性の低い人のほうが高い人より年収が多い。
☆利己主義は相手の信頼を失わせ、社会を不幸にする。
☆善人は成功しない。
☆他人と自分への気遣いを忘れない善人がトップに立つ。
総括
同調性の低い人間は、年収が高くなり、利己主義は優れた能力を発揮する。
しかし、世の中ぜんたいを見ると、長期的な利己主義は社会や集団を崩壊しかねない。
自分よりも他人へ与える、優しい人格の持ち主は、自分の将来をおろそかにし、他人から搾取され、成功をつかめなくなる。
だが、自分の幸せも考える善人は、周りから信頼され、評価も高まり、最も成功に近い人間になることができる。
これは、私たちに温かい希望を与えてくれる結果になった。
相手も幸せにして、自分も幸せになる。
まさに、理想的な成功論だ。
<終わり>
参考文献
エリック・バーガー「残酷な成功法則」飛鳥新社