汚れの見えるドラゴンクエスト
近頃のテレビゲームは昔と比べて映像がきれいになりました。
テレビゲームだけではなく、カメラの解像度やパソコンのディスプレイ、テレビの放送も前より細かくきれいに映るようになっています。
4K、8K。映像がきれいになるように時代は進んでいるようです。
それは、あのドラゴンクエストも同じです。
キャラクターの顔の表情や服のしわなど、ゲーム機が次世代になればなるほど映像がきれいになっています。
映像がきれいになれば、表現力が上がり、いままで見えなかったものも見えるようになります。非現実的なテレビゲームの世界なのに、現実とまったく同じように見えるようになればゲーム体験はさらなるステージへとアップするでしょう。
あの美しいドラゴンクエストで、あんなものが見えたらどうなるのだろう。
汚れが見える
ボクシングの試合では選手が互いを殴ります。顔にパンチがヒットすれば、赤く腫れたり、鼻から血がでたりします。体中から汗がでて、髪も乱れます。
なにかをすれば、なにかしらの変化が起こるのは当然のことです。
さっき買ったスコップで地面を掘れば、地面には穴ができて、スコップには土が付着します。
しかしドラゴンクエストではモンスターの鋭利な爪で引っかかれても服はぼろぼろになりません。変化があるのは、HPの値です。
どうのつるぎでモンスターを何回斬っても、モンスターは血を流すことはなく、剣もさびることはありません。
それはそうでしょう。ドラクエはテレビゲームです。プレイする子どもが血を見るのは好ましくありませんし、剣が使えなくなるたびに武器屋に行くのは楽しいことではありません。
ゲームは楽しくあるべきで、それを邪魔するような要素はいらない。
しかし、ゲームの臨場感を高める演出としてならどうでしょうか。
モンスターからこうげきを受ければ、主人公の顔にあさができて、服が破れる。構えている盾にある紋章もかすれて、傷む。モンスターを剣で斬れば、モンスターの毛やうろこが周囲に飛び散る。
なにかをすれば、変化が起こる。モンスターを倒せば経験値がもらえるように、行動のひとつひとつに細かい反応があれば臨場感は高まります。
現実と同じ変化が起こることで、テレビゲームに新しい思考が加わります。
例えば、ゲームの中で雨が降っていれば、プレイヤーは水たまりを避けようとするかもしれないし、逆に靴が濡れる演出を楽しんで入ろうとするかもしれない。
泥の地面を避けて歩いたり、王様に会いに行く前に宿屋に泊まって身だしなみを整えたり。体に傷がつくのが嫌だから、モンスターとの戦闘から逃げたり。
汚れの演出があることで、汚れていない状態に価値が生まれ、汚れないように行動するという思考が生まれました。
冒険には汚れがつきものです。しかし汚れがあることで新たな楽しみが増えるかもしれない。
試合後の顔がぼろぼろのボクサーを見て胸が熱くなるように、モンスターとの激しい戦闘で顔も体もぼろぼろになったキャラクターを見てリアルな感動を覚えるかもしれません。
汚れが見えても見えなくても、ドラゴンクエストは面白い。
しかし汚れのあるドラゴンクエストには新しい発見があるに違いない。