ドラクエは「会話」のゲーム
音楽、ストーリー、キャラクター。三重奏のハーモニーがいつまでもあきさせない。どこまでも続く、ワクワクドキドキの冒険。ドラゴンクエスト。
小さなダンジョンと攻略の連続。刻みのいいレベルアップ。画面にポップに描かれた世界。宝箱を開けたくなる衝動。
ピピピという電子音と柔らかい色調。コミカルでシリアス。目に優しいファンタジー。じんわりと温かくなるゲーム、ドラゴンクエスト。
話すということ
ドラクエではボタンを押すと目の前にいるキャラクターに話しかけることができます。
エプロンをつけたおばさんだったり、おかっぱ頭のおじさんだったり、踊り子や少年少女、兵士や王様、モンスターや魔王、そして仲間だったり。
人に話しかけることはモンスターと戦うよりも大切なことです。
少し暗いメッセージウィンドウが画面の下に現れ、ピピピという音と共に白い文字で会話がはじまります。
町の人たちは雄弁に話します。なにげない世間話、愚痴や不満、気になるニュース、冒険に役立つヒント、自分がどう生きているのか、近所の噂、神様へのお願いや家族の話など。実にバラエティに富んでいます。
武器屋や防具屋の売人に話しかけることは、ドラクエの世界で生きていくために必要なことです。いま装備している武器よりも強い武器を買ったり、モンスターの攻撃に耐えられる丈夫な防具を新調することで有利に戦うことができます。
仲間とコミュニケーションを取ることは大事なことです。一緒に冒険する仲間がなにに喜びを感じ、また怒りを感じるのか、会話の中で互いの理解が深まります。
ぼくたちはなぜ冒険するのか、なにを目指して戦うのか。その意味を明確にして決して忘れないために仲間と話をします。
長い戦いを続けていれば、ついに、魔王と話をすることができます。魔王は邪悪な顔を見せ、重たい口を開けて話しかけてきます。
多くの場合、魔王は余裕の笑みを持って主人公たちと話をします。自分の存在、自分の憎むべき存在、自分の理想の世界、世界の歴史、これからの世界のはじまり。
なぜ戦うのか。最後の戦いを前にして、魔王はもう一度主人公たちに問います。
ドラゴンクエストは「会話」のゲームといってもいいかもしれません。
なにも知らない、弱い勇者が強くなるには人と話をしなくてはいけない。
度重なるモンスターたちとの戦いも、もしモンスターが言語を話せたのなら、たたかう、さくせん、にげる、のほかに「はなす」というコマンドがあってもおかしくありません。
互いの命をやりとりする。その確認を会話の中でするのです。
話すということは相手を知り、自分を知り、世界を知り、その世界を冒険する意味を知るということです。