雨が降ったときに、パラソルの中でするような話をひとつや2つ。それは喜劇か、悲劇か、またはビジネスか。

#5 アミ

2018/10/17
 
この記事を書いている人 - WRITER -
☆☆☆昨日を超える、きょうとなれ!☆☆☆ 1996年生まれ。24歳。ブログ歴もうすぐ3年。目標ブログ月収10万円! 「最初の読者は自分」をコンセプトに、まず第1に自分が読みたい! タメになった! 毎日きちゃう! 記事・ブログづくりを行っています。 自己啓発系 月5~6本、テレビゲーム系 月1本ペースで執筆中!
詳しいプロフィールはこちら

それはきれいに形が整えられた台座だった。台座の上には片手で持てるサイズの箱が置いてある。

ぼくは本能的に台座の前まで行き、箱を手に取ろうとした。そのとき、くらくらするめまいがぼくを襲った。

「あーあ、罠にかかったな」

「ほら、足元を見てみろ“落とし穴”だ」

壁を登ってきた二人の男たちがそう言った。

ぼくが足元を見ると、丸い白線の中に自分がいることに気付いた。

「でも、これが落とし穴なの?」

「それは人を落とすための落とし穴じゃなくて、人のものを落とす落とし穴さ、見てみな」

リュックの男がそう言いながら丸い線の中に入ると、ドサッとリュックの男が背負っていたリュックが地面に落ちた。

「おれの場合は」

今度はコートの男が丸い線の中に入った。すると、着ていたコートが体から落ちていった。

「ほらな」

ぼくは自分の体を見ながら、首をひねった。

「ぼくは何も落としてないみたいだよ」

「そんなことはないさ、ほら」

リュックの男が指差した先に目をやると、木と木の間に黒い人影があった。その人影はぼくと同じくらいの身長で、体つきも似ていた。

「マッティが落とし穴で落としたのは自分の“影”さ」

「自分の影だって!?」

ぼくは目を丸くさせて自分の足元を見たが、月明かりに照らされてあるはずのぼくの影はどこにもなかった。

もう一度前を向くと、ぼくの人影は姿を消していた。

「困ったな……でもいいか、影くらいなくても」

「そうだな、日が昇るまでは影なんかなくてもいいな」

「それってどういう意味?」

「影をなくした人間が日の光に当たると消滅するのさ」

「消滅……」

ぼくは目の前が真っ暗になった。

「消滅ってつまり」

「この世からいなくなって、もう戻ってこれなくなるのさ」

「これなくなるのさ」

二人の男はまるで歌でも歌うようにそう言った。

「この世からいなくなるなんて……そんなのあんまりだよ」

「心配するな、落としたならまた拾えばいい」

リュックの男はリュックの中からリコーダーくらいの長さの棒を取りだした。

「これは“影アミ”影を捕まえるためのものだ、ほらよ」

ぼくは影アミを受け取った。

「ただの棒みたいだけど……アミもないし」

「ボタンを押してみな」

言われるがままにボタンを押してみると、棒はにょきにょきと成長していき先っちょにアミが現れた。おもしろい棒だ。夏休みの自由研究にだせばみんなから注目を受けるかもしれない。

「さてと、これがムサヤ族のお宝か」

リュックの男は台座の上にあった箱を手に取った。カギはかかっていないようで箱は簡単に開けられたが、中身を見たリュックの男は肩をがっくりと落とした。

「おいおい、まじか、こんなのがお宝かよ」

「やれやれ、だな」

リュックの男は箱をリュックの中に強く押し込んだ。

「さあ、帰るか、腹も減ったしな」

「そうだな」

「ちょっと待ってよ、ぼくの影はどうなるの?」

「そうか、影を捕まえなくちゃならないな……マッティ、きょうは疲れたから、今度にしない?」

「今度って、朝が来るまでに影を取り戻さないとぼくは消えちゃうんでしょ?」

「冗談、冗談、そう熱くなるなって」

「おーい、この下を見てみろよ」

コートの男がそう言ってぼくとリュックの男を手招きした。近づいて崖の下をのぞいてみると、ムサヤ族がお祈りをしているのが見えた。

「マッティ、ムサヤ族の一番うしろにいる黒いの、あれ影じゃないか?」

#6 夜明け

この記事を書いている人 - WRITER -
☆☆☆昨日を超える、きょうとなれ!☆☆☆ 1996年生まれ。24歳。ブログ歴もうすぐ3年。目標ブログ月収10万円! 「最初の読者は自分」をコンセプトに、まず第1に自分が読みたい! タメになった! 毎日きちゃう! 記事・ブログづくりを行っています。 自己啓発系 月5~6本、テレビゲーム系 月1本ペースで執筆中!
詳しいプロフィールはこちら
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

ゲーム機の電源、ぽちっ♡

Copyright© パラソルと雨 , 2018 All Rights Reserved.